環境DNAのPCR測定に供するサンプルを迅速に採取・抽出する方法として、簡易抽出法を開発しました。その特徴として、
- 短時間で完了する
- 現場で分析が可能
- 加熱・遠心等の機器が不必要
(ヒータ、インキュベータ、ボルテックスミキサー等を必要としない) - 手順が少ない
- 実験に不慣れな人でも作業しやすい
- 標準的な抽出法と比較して遜色のない感度が得られる
この方法によると抽出は約10分で行うことができます。以下にその作業手順を紹介します。なお、この方法は動画でもご覧いただけます。
1. 採水
川などでバケツなど使って採水する写真2. カートリッジ型フィルターによる濾過
シリンジを使って、カートリッジ型フィルタ(Sterivex等)を用いて、ろ過します。3. ろ過後
4. DNA抽出試薬の注入
規定量のカネカ社 簡易DNA抽出Kit V2 のA液をSterivexに注入します。5. 攪拌
約1分間、注入したA液がフィルタに行き渡るよう、手で攪拌します。6. 排出
ステリベックス内の液を、マイクロチューブに排出します。この際、ステリベックスとマイクロチューブをビリュー式遠心器にセットし、回転させることで簡単に排出できます。6.1 ビリュー式遠心器の準備
6.2 マイクロチューブのセット
6.3 Sterivexのセット
6.4 回転
6.5 排出後
7. 中和
マイクロチューブに、規定量のカネカ社 簡易DNA抽出Kit V2のB液を注入します。
8. サンプルの分注
マイクロチューブに抽出した液を分注します(1.4μL)。9. 抽出液と試薬の混合
マイクロチューブにPCR試薬(マスターミックス)を添加し、攪拌します。10. 流路チップへの注入
検体をPCR1100用の流路チップ(MCP1100)に規定量注入します。11. 流路チップのセット
流路チップをPCR1100にセットします。12. PCR測定
PCR1100のスタートボタンを押すと、初期設定後に測定が始まります。13. 測定終了
既定のサイクルが終了すると、検出・非検出が表示されます。
ゴーフォトンは、環境DNAの測定で、日本板硝子(株)社製モバイルPCR装置PicoGene®PCR1100を用いたアプリケーションを開発しています。この装置を使用することで、PCR測定が10~15分で行うことができます。
しかしながら環境水から被検体を抽出するプロセスは、例えば環境DNA学会のマニュアルに従うとかなりの手間、機器類、時間を必要とし、上記の短時間での検出の特徴を生かすことが困難です。ゴーフォトンでは、採水からPCR検出までの工程をいかに短時間で行うかを検討してきました。