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人獣共通感染症とPCR診断


1.人獣共通感染症とは(Zoonotic-Disease)

人獣共通感染症(zoonotic-disease)のイメージ図

人獣共通感染症、またはズーノーシスとは、同一の病原体でヒトとヒト以外の脊椎動物の双方に罹患する感染症で、その代表的な例として、食中毒の原因として有名なカンピロバクター症、狂犬病、ダニによって感染が広がっているダニ媒介性脳炎や重熱性血小板減少症候群(SFTS)、鳥インフルエンザ等があります。

動物からヒトへ、ヒトから動物へ伝播可能な感染症は、全ての感染症のうち約半数を占めているとされており、医師及び獣医師は活動現場で人獣共通感染症に接触するリスクを有しています。こうした分野横断的な課題に対し、ヒト、動物、環境衛生に関わる者が連携して取り組むOne Health(ワンヘルス)という考え方が世界的に広がってきています。

現在ヒトに感染することが知られている感染症は分類上の種で1415に上る。この内866種(61%)が人獣共通感染症であるとされている。即ちヒトが感染する病原体の半数以上はヒト以外の動物にも感染する。また、新興感染症の75%は人獣共通感染症である。人獣共通感染症の病原体のうちの33%が人から人へ感染しうる。公衆衛生上の問題となる病原体はいったん動物からヒトに伝播した後、ヒト間で更に伝搬できるこの33%の病原体であると言える。
感染症が新たに勃興してくる原因として地球人口の激増、生態系への干渉、航空機輸送の発達に伴うヒト、動物、物の国際間移動の高速化、気候の変化等が挙げられる。野生動物が介在する感染症は生態系との関わりが深く、たとえ僅かであっても環境の変化がエコロジカルニッチに与える影響は無視し難く、ニッチを使用する動物の生態系が撹乱されることにつながる。生態系が撹乱するとたとえな捕食動物が減少し、様々な病原体を保有している可能性のある齧歯類などが異常繁殖し、結果的に齧歯類に由来する感染症が発生することになる。

人獣共通感染症(ズーノーシス:zoonoses)とは、「ヒトと脊椎動物の間を自然に伝搬しうる全ての病気又は感染症」で寄生虫症と細菌性食中毒も含む」と定義されており、これらの多くは動物由来によるものである。一方、かって知られていなかったかもしくは新しく認識された感染症で、局所的あるいは国際的に公衆衛生上問題となる感染症を「エマージング(新興)感染症」、また既知の感染症で、既に公衆衛生上問題にならない程度まで患者(数)が減少していた感染症のうち、再び流行し始め、患者が増加した感染症を「リエマージング(再興)感染症」という。今日、これらののエマージング・リエマージング感染症は毎年のように出現しており、またこれらの多くは人獣共通感染症でも有る。


2.人獣共通感染症の例


(1)重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

重症熱性血小板減少症候群の原因のダニと犬の写真

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、近年発見された人獣共通感染症の一つで、主にウイルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染するダニ媒介性感染症です。渡り鳥に付着したダニによって日本に運び込まれたとされています。SFTSを保菌した野外のダニが飼猫に噛みつき・感染し、それが飼主に伝染するという経路で広がっていると考えれれています。
人間で約40%、猫では60%以上という非常に高い致死率の感染症であり、猫では発症から1週間未満で亡くなってしまうような非常に危険な病気です。そのため、SFTSに感染していることを早急に特定し、適切な治療をすぐに開始する必要があります。
2024年、人間用の治療薬が認定されましたが、猫の治療薬は未だ特定されていないため、早急な特定・治療が必要であることに変わりはありません。更に、動物病院では、獣医師に感染する可能性もあることから、動物病院に患者猫が運び込まれたその場でSFTSで有ることを特定することは非常に重要です。
SFTSについて、今般、発熱・衰弱等に加え血小板減少等の所見が見られた飼育ネコ及び飼育イヌの血液・糞便からSFTSウイルスが検出された事例並びに体調不良のネコからの咬傷歴があるヒトがSFTSを発症し死亡した事例が確認された。


(2)レプトスピラ症(ネズミ・犬猫・家畜)

レプトスピラ症の原因のネズミの写真

レプトスピラ菌は保菌しているネズミ、イヌ、家畜などの哺乳動物の尿から排泄され、土壌や水を数週間にわたり汚染します。このため、土壌、水、保菌動物と接触した際に、皮膚や粘膜から体内に菌が侵入することで感染します。大雨や洪水のあと、汚染水が滞留する、ネズミと接近する機会が増えるなどにより、感染の危険性が高くなる。


(3)薬剤耐性菌(AMR: Antimicrobial Resistance)

薬剤耐性菌の黄色ブドウ球菌(MRSA)のイメージ写真

抗生物質を使い続けていると、細菌の薬に対する抵抗力が高くなり、薬が効かなくなる、あるいは効きにくくなることがあり、これを「薬剤耐性」といい、薬への耐性を持った細菌のことを薬剤耐性菌( Antimicrobial Resistance bacteria)といいます。
薬剤耐性は、耐性を持たない別の細菌に伝達され、その細菌も薬剤耐性化し、次々に連鎖していくことがあります。
近年、実際に現れた耐性菌の例としては、院内感染の起炎菌としてとらえられているメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が挙げられます。ブドウ球菌は、抗生物質の登場で克服されたかにみえました。しかし、その抗生物質が効かない耐性菌が現れました。その耐性菌を克服するための新しい抗生物質が開発され、さらにその抗生物質も効かない耐性菌がでてくるという、人間と細菌との戦いが続いています。
また、ウイルスに対しては、抗ウイルス剤が開発されてきていますが、抗ウイルス剤が効かない薬剤耐性ウイルスも現れています。そのため、現在、効果的な薬の併用療法や遺伝子工学を応用した薬の開発、生体防御機能を高める方法などの研究が進められています。このまま何も対策がとられないと、2050年には全世界でAMR関連の死亡者数は毎年1000万人に上り、がんによる死亡者数を上回ると言われています。
以上のような理由から、抗生物質の使用が必須である病気にのみ抗生物質を使用し、安易に使用することを慎まなければなりません。抗生物質の投与が必須である病気を、迅速に検出し、適切な薬剤を使用するため、PCR1100を用いることができます。