水産業・養殖の魚病
養殖業における魚病のPCR診断

1.鯛エドワジェラ症とは?

2.ブリのラクトコッカス症
3.養殖業のエビの病気

(1)白斑病とは?
エビの白斑病(White Spot Syndrome Virus:WSSV)は、世界中の洋食エビ業界に甚大な被害を与えているウィルス性の急性致死性疾患です。クルマエビ、バナメイエビ、ブラックタイガー等の多くの甲殻類が感染します。甲殻表面に直径1~2mmの白い斑点が発生します。死亡率は非常に高く、発症から数日で80~100%のエビが死亡することもあるようです。そのため、養殖池内で爆発的に蔓延し、1週間以内に大量死を招くこともあります。被害規模が池全滅レベルになることもあり、経済的損失が極めて大きい病気です。
WSSVは、エビ養殖業界で最も深刻なウィルス疾患で、感染力・致死率ともに極めて高く、それにもかかわらず適切な治療方法がないため、PCR等による早期診断と徹底した予防策が不可欠とされています。

日本ではブリやサケのほか甲殻類、貝類など多くの魚介類が養殖されており、その産出額は2020年の統計で5,303億円、漁業全体の約40%に上ります。養殖場には限られたエリアに多くの個体がいるため、一度ウイルス感染が起こるとすぐに拡がり、大きな被害となることがあります。ウイルスなどの感染症から魚介類を守ることは、水産業にとって重要な課題といえます。日本では農林水産省を中心に、水産動物の感染症を防ぐための様々な対策を進めています。
水産物は国をまたいで取引されています。中でも輸入は、海外から病原体が持ち込まれ得るタイミングといえます。過去には、輸入によって国内で確認されていなかった新しい魚病が拡がり、大きな被害を受けたことがありました。そこで、農林水産省は水産物の病気を持ち込ませない、さらに国内でまん延させないために2つの法令(水産資源保護法、持続的養殖生産確保法)を定め、対策を取っています。
持続的養殖生産確保法は、国内で指定されている疾病に罹っていることが判明した場合に、感染した水産物の移動を禁止したり、殺処分することで他の養殖場に感染を拡げないための法律です。水産資源保護法は、海外から魚病が持ち込まれるのを防ぐための法律で、水産物が指定された疾病に罹っていないことを証明しなければ国内に輸入できません。
このほか、現場でウイルスをいち早く見つけることも重要です。近年では、ウイルスや細菌などを検出するために、遺伝子診断をはじめとする技術が数多く開発されています。このような技術を用いて異常な魚や発症した魚を速やかに検査するほか、魚病の種類によっては発症の有無にかかわらずPCR(※1)等により定期的に検査されることもあります。